SMA厚膜形成、微細加工技術

[SMA厚膜形成]

  1990年頃からスパッタ法を中心としたSMAの薄膜形成の技術開発が進み、厚さ12μmTiNi 形状記憶合金薄膜ではバルク材料レベルの形状回復応力と回復が実現されています。

本研究室では、数10μmクラスTiNiCu系のSMA膜形成する手法として特殊フラッシュ蒸着法を開発しています。微小なSMAペレットを蒸着させ、適正な蒸気組成のタイミングでSMA膜を堆積させ(~200n)これを繰り返して厚膜積層していく手法です。膜中に取り込まれるCu0.5 at.%程度ですがCu添加によって積層過程での結晶粒成長が抑制されて緻密な組織を維持したまま30μmの柔軟な厚膜を得ることができます

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フラッシュ蒸着で形成した
SMA積層厚膜の断面 (20μm厚)

[SMA電解エッチング]

 TiNiSMAは,化学的に非常に安定な難エッチング材料であり、従来はフッ化水素酸と硝酸の混酸でのエッチングが知られている程度でした。本研究室では、電解エッチングによる微細パターニング手法を開発し,実用レベルの技術として確立してきました。フォトレジストをマスクに用い、陰極と対向させて電解液中で電圧を印加することにより、適正な条件下では、深さ方向にサイドエッチングの1.52倍の速度で加工できる手法です。水溶液系の電解液では陽極酸化も生じて加工面が荒れやすいため、LiClを溶質に用いたメタノールやエタノール溶媒の電解液を見出し、良好な微細エッチングを可能にしました。

TiNiCu合金でもTiNi合金とほぼ同様の特性で電解エッチングが可能であることも見出し、また,貫通加工の際に電解電流のバランスを維持するために、導電性のダミー下地層を設けておく手法も開発しました。

 平面状のSMAのみならず、円筒リソグラフィ法によってSMAチューブの側面にレジストパターンを形成すれば、側面を超微細ばね型アクチュエータ形状等に加工も可能です。

フラッシュ蒸着 (自作開発)

 TiNi系をベースとした形状記憶合金(SMA)107 J/cm3オーダーのエネルギー密度を発揮し、種々のアクチュエータと比べ桁違いに大きい力と変形量を生み出せる有望なアクチュエータです。しかし厚膜形成と微細エッチング加工が難しいため、MEMSデバイスへの応用が制約されていました。

電解エッチングによるSMAの微細加工
・TiNiシートの両面エッチング

電解エッチングによるSMAの微細加工
・ TiNiCuチューブの円筒面エッチング